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 世界にひとつだけの花 


花が綻ぶような笑顔に心を奪われた。


彼女に惹かれているのだと薄々自分でも感づいていた。
彼女が隣にいると心が安らいだ。
笑った顔をもっと見たいと思ってた。
・・・涙が綺麗だとも思っていた。
彼女に心を奪われていたのだと思い知ったのは、彼女を亡くし た瞬間だった。


想いの全ては彼女に。
どうせなら心の全てを根刮ぎ奪って持って行ってくれれば良か ったのに、と。
彼女を失って。
景色が色褪せ、世界から音がなくなって。自失した俺は絶望よ り深い深淵があるのだと思い知った。


彼女が居ない。
花が綻ぶような笑顔を向けてくれる事も。
綺麗な涙を拭わせてくれる事も。
花のような優しい香を身に纏って俺を和ませてくれる事も。
もう二度とないのに。
彼女の温もりを失って、急速に冷えていく心を抱えた俺を。
時間が。
世界が。
待ってくれはしなかった。
俺が彼女を失った絶望だけを味わう事は許されなかった。
俺が彼女を失った悲しみで自失していればいるだけ、世界が壊 れた。
彼女が愛した花が、花畑が、場所が、世界が崩壊に突き進んで いくのを。
黙って見てるわけにはいかなかった。
彼女が俺の全てを奪ってくれていれば世界の崩壊と共に、俺も 消える事が出来たのに。
彼女の温もりと。
彼女が流す綺麗な涙と。
彼女の花のような笑顔と。
彼女が身に纏う優しい香を抱いて、俺も壊れる事が出来たのに 。
それすら出来ない程彼女は俺の心を埋め尽くしていたのだ。
彼女を失って、それでも彼女への想いが俺を突き動かすほどに 。
絶望になんて浸って彼女が愛したこの世界を護れない事の方が 嫌だと。
彼女が命懸けで守ったこの世界を踏みにじられるのが、どうし ても許せないほど彼女に。


仲間の誰かが言った。
彼女はこの世界の一部になった。
この大地が。
吹き抜ける風が彼女だと。


幼馴染みに彼女は花だと答えたことを思い出した。


彼女は花のように綺麗だった。
彼女は花のような香を纏っていた。
彼女は花のような笑顔で人を魅了した。
彼女は確かに花。
大輪の花ではなくて。
誰かに摘まれるのを待つ花でもなくて。
誰かの手がなければ萎れてしまうだけの花でもなくて。
人目がない路地裏でも咲いて、誰かの目を楽しませる花。
優しい香で誰かを和ませる、花。
誰かの手がなくても自力で咲く花。


いいや、違う。


誰かの手がなくても自力で咲く花ならこんなにも惹き付けられ なかった。
萎れてしまっても、自力で咲こうとする花だから惹かれた。
俺が見つけた、花。


だから。
彼女をまるで聖女のように言うのを止めてくれ。
同じ人間なのだ。天使でもなければ、聖母でもない。普通の女 の子。


人目のない路地裏で咲いていた彼女を見つけたのが俺。
だから彼女は花。

綺麗に咲いて俺の目をひく花。
優しい香で俺を和ませる花。
ふわりと咲いて俺を魅了した花。
誰の手もなくて萎れてしまっても、俺に見つけられて咲いた花 。
彼女は花。
世界の一部になんかならずにきっとどこかで咲いてる。
綻ぶような笑顔を向けてくれる花。
綺麗な涙を拭わせてくれる花。
優しい香を身に纏って俺を和ませてくれる花。
世界のどこかで咲いて、俺を待っててくれる花。
だから探しに行く。
俺だけの、世界にひとつだけの花。








またもほの暗く・・・。と作者の智里の言葉ですが
2009 長


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以下(↓)ひとりごとです

『私の中にある空ろ。』の対になるクラウド視点作品

クラウド→エアリスです
やっぱり クラウド←→エアリスかは・・・わかならい・・・

ただただひたすらにひたむきなほどに想うクラウド
エアリスのことを想う気持ちだけが
自分の中で唯一綺麗なものであるかのように
かけがえのない宝物のように
ようやく執着できるものを見つけたかのように
それしか持たない、それこそが自分のすべてかのように

クラウドはそういうヒトでいいと思っています

2009 長


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